色々な出来事

僕が遭遇した出来事を書きます

眠れる洋菓子職人

突然ですが、皆さんは家庭でお菓子作りをしたことがありますか?

今日はバレンタイン。毎年お菓子を作っているという方もいるのではないでしょうか。かく言う僕も嘗て一度だけ、バレンタインに手作りのお菓子を作ったことがあります。そこで今日は、慣れないお菓子作りに奮闘した僕と、そんな僕が危機に陥った時に見えた力について話したいと思います。

 

あれは僕がまだ中学3年生だったときのこと。バレンタインが近づいてきたある日、一人の友人が相談してきました。「ドッキリを仕掛けたい。どうすればいい?」と。

というのも、僕は小6の頃から毎年バレンタインにはターゲットを決め、ドッキリを仕掛けることを習慣としていました。「何を言っているのか分からない。」「なんだその習慣は。」と思う方もいるかもしれませんが、とにかく僕にはドッキリに関して一日の長がありました。

ですから、友人は僕にドッキリの相談を持ち掛けてきたのです。友人のプランを聞いてみると、「ターゲットの下駄箱の中にチョコを置いておく。ターゲットがそれを食べるとチョコの中には大量のわさび入り。」という古典のようなプランでした。ですが、なんだかんだで僕は友人に協力することとなりました。

 

 

そうして、僕は人生で初めてのお菓子作りに挑むこととなったのです。バレンタイン前日、僕たちはチョコレート、チューブわさび、デコレーション用のペン、かわいらしいラッピングなど必要な材料を買い集め、友人の家に集まりました。

僕たちは手始めにチョコレートを細かく砕き、「湯せん」を見よう見まねでやってみました。水を張った鍋を火にかけ、その中にボウルを浮かべ、チョコを溶かす。見よう見まねにしては順調にいきました。いい感じにチョコが溶けてきたところで、チューブわさびを丸々一本投入。きっとこの時の僕たちはかなり悪い顔をしながら、ボウルを混ぜていたんじゃないかと思います。

 

しかし、順調に見えたチョコ作りはここから崩壊していくことになります。チョコとわさびがしっかり混ざった後で、チョコに異変が。パサパサというかモソモソというか、どんどん固くなってきたのです。そう、僕たちは鍋に火をかけたまま作業していたのでチョコは混ぜられている間にもどんどん加熱され、油分が分離し始めていました。湯せんをする時のベタなミスです。

ですが、「加熱し過ぎて油分が分離したから固くなっている。」なんて事は成長した今の僕だから言える事。当時の僕たちにとってはただの怪現象です。目の前でみるみるツヤを失っていくチョコレート。狼狽した僕は「ねぇ、わさび!?わさびが原因!?」と、その場の誰もが答えを持っていない問いを繰り返したのを憶えています。

そんな僕をよそに、友人が冷蔵庫を開けました。「水分が抜けて固くなってるんやとしたら、何か水分を足せばいけるかも!」と。「潤いがないなら自分で足せばいい」今思えば、謎のDIY精神ですね。

けれど、その時はそうするしか道はありませんでした。僕はとっさに冷蔵庫にあったオレンジ(1/2個)を取り出し、自分の握力のままに力いっぱい絞りました。

結果から言うと、手搾りかつ搾りたてのオレンジ果汁を惜しげもなく使用した甲斐なく、僕たちはチョコの蘇生に失敗しました。モソモソになったチョコにはペンでデコレーションを施し(特に書くことも思いつかず、チョコ全体にただ楕円を書きました。)、どうにかこうにか形にしました。

こうして、僕の初めてのお菓子作りは幕を閉じました。「ベタな失敗から始まり、それを挽回しようとして更なるミスを重ねて、散々じゃないか!」と思われても仕方ありません。しかし、僕はこの一連の自分の行動から「自分の中に眠っている力」の片鱗を感じます。何故なら、あの切羽詰まった状況で無意識的にオレンジを選択しているからです。あの時、冷蔵庫には水分として使えそうなものがオレンジ以外にもありました。ヤクルトなどです。ですが僕はほぼノータイムでオレンジを選択した。そして、この世には実際、オレンジピールチョコというものが存在します。これは単なる偶然でしょうか?もしかすると、僕のうちに眠っている洋菓子職人が目覚めようとしているのではないでしょうか。

僕はあれ以来、お菓子作りには挑戦していません。次にあの洋菓子職人が目覚めたとき、僕は僕でいられるのでしょうか・・・・・・。