色々な出来事

僕が遭遇した出来事を書きます

緊迫!密室ゲーム

 

突然ですが、みなさんは就活してますか?

就活は人事や他の就活生と密室で行われる駆け引きしたり、いままで見えなかった自分の一面を、自己分析によって見つけたりしますよね。

私はいま就活生ですが、思い返せば私は、何年も前、すでにそれに似た経験をしていました。

 

あれは私がまだ中学三年生だった頃。

ある休日、私を含むクラスの男子4人と女子4人の計8人で集まって、みんなでホラー映画を観ようという事になった。大量のお菓子とジュースを買い込み、それらをつまみながら、我々男子チームが適当に見繕ってレンタルしてきたホラーDVDを再生した。

再生してからも、本編が始まるまでに関連DVDの宣伝映像や流れたりしていたので、まだみんなお菓子を食べたりお喋りしたりしていた。私もなんとなく視界の端に画面を見つつ、お菓子を食べていたのだが、やがて画面が暗くなり始まりそうな雰囲気になったので、ちゃんとテレビ画面の方へ向き直る。

すると、画面には本編開始前のお断りが表示されていた。私が画面を見てから1秒ほどで画面が切り替わったので、私がお断りの文言を目にした時間は本当にわずかなものだが、確実にこう書かれていた。

 

お断り

このDVDの本編映像には過激な性的描写が含まれます。ご了承ください。

 

 

 

 

 

――――絶対にDVDを止める。

真っ黒の背景に白い字で書かれたその「お断り」を捉えた瞬間から、私の顔つきは任務を帯びた男のそれに変わったのである。調子よくお喋りし、スナック菓子をバリバリとほおばっていた馬鹿そうな男子中学生はもうそこには居なかった。

 

いつからだろうか。ドラマや映画のラブシーンで気まずくならなくなったのは。

友達と一緒に映画やドラマを見ているときにラブシーンがあっても、大人となった今、そんなもので気まずい雰囲気にはならない。

しかし、この時の私たちは全員中3。しかも描写は過激な」ときている。

画面の向こうで展開される情事。さして飲みたくもないコーラを飲むふりをして、なんとなく気まずさを紛らわせようともがく。そんな自分や友達の姿が、私にはハッキリ見えた。

 

そんな未来を回避するためにも、私は人知れず動き出す。まず、DVDが入っていたケースに手を伸ばした。そしてケースのラベルから本編は90分という情報を得た。

90分のホラー作品で自分が監督ならば、ラブシーンを終盤近くにもってくるだろうか?

 

否である。

ホラーのセオリーに従えば、ラブシーンは遅くとも中盤までには済ませておきたい。

つまり、全90分のうち、前半45分の間に敵は来る。

多く見積もっても、45分以内にDVDを止めねばならない。

 

こうして私が状況確認しているあいだにも、本編開始からすでに5分経過していた。

残り時間は40分。私は早速、次の一手を指した。

 

 

 

「あ、あ~、なんかつまらんくない?」

 

 

 

 

――――シンプル・イズ・ザ・ベスト

これである。最もシンプルでありながら、力強い一言。これでDVDを止めてみせる。

 

しかし、すぐさまA(私以外のメンバーを便宜上、A・B・C・D・E・F・Gとする)が「いや、まだ始まってから5分くらいしか経ってないやん」という、ごもっともというほかにない指摘で私を制した。

おいおいおい!という感じである。5分くらいしか経ってないからこそ、今のうちにだろ!とは言えなかった。

私の葛藤を知らない人からすれば、DVDの冒頭5分で作品を「つまらない」と切り捨てる、せっかちクソ野郎へと私は成り下がっていた。

だが、只々せかっちクソ野郎へ成り下がったわけではない。これで私は確信した。Aは「お断り」を見ていない側の人間であると。

もしも、「お断り」を見ていて私と同じ志を持っているならば、DVDを止めようと立ち回る私の援護をしてくれるはずである。先ほどの私に対して援護が皆無であったことを考えると、「お断り」を見たのは私だけなのかもしれなかった・・・・・・。

私は強い孤独感に襲われた。

 

意気消沈した私はその後しばらく、黙って画面を見続けた。

と言っても内容は一切、頭に入って来てはいなかった。情事が始まりそうか否か。その時の私にはそれ以外の情報はどうでも良く、逆に言えば、それだけを判定するサイボーグのような存在になっていた。あと、緊張状態にある私の飲み物の消費量、消費速度は共に群を抜いていた。

 

仮初めの平和は突如崩れ去る気配を見せた。本編開始から30分、サイボーグのレーダーに反応があったのである。

画面上で、登場人物たちが、どんどん暗がりに突き進んでいく。

まずい。これは本当に始まる。

ここで私は最後の一手を指した。

 

 

 

「なんかあれやな、つまらんな~。」

 

 

 

――――シンプル・イズ・ザ・ベスト

これである。これしかないのである。藁にもすがる思いで放ったこの一言に続いたのは予想外の言葉たちであった。

「たしかにな~、他の見ん?」とBが

「そうしよ!ほかのやつ見よ!これダメや」とCが援護してきたのである。

私とBとCの強い主張により、私はついにDVDを止めることに成功した。

そこからは安心感からか、あまり覚えていない。ただ、後で確認したところBとCも「お断り」を見て、DVDを止める機を狙っていたのであった。私は最初から一人ではなかった・・・・・・

 

 

この一件から私は自身の新たなる一面に気づくこともできた。

「お断り」をあらかじめ見た私は、ラブシーンの予感を察知し次第、トイレのふりなどで席を外し、自分だけ気まずさから逃げることは、やろうと思えばできたのである。

しかし、私はその選択をしなかった。私は意外と他人のために頑張れるという事に気づけたのだ。

 

みなさんも隠された自分の一面というのを探してみてはどうでしょうか。