色々な出来事

僕が遭遇した出来事を書きます

緊迫!密室ゲーム2

 

突然ですが、皆さんは武術や格闘技の経験があるだろうか?

よく漫画などで、武術を極めた師範のような奴や、直観や戦闘センスを生かして奔放に戦う野生児みたいな奴が描かれる。

だが、これは漫画の世界だけの話ではない。こういう奴は実在するのだ。

今日は私が嘗て、実際にそんな男と対峙したときのことを話したい。

 

 

私がまだ高校三年生だったある日、私は友達と二人で買い物へ出かけた。

しばらく買い物を楽しんだ後、帰るために電車に乗ることにした。時間は帰宅ラッシュの少し前だったので、大きく混雑はしていないものの、それなりに乗客がいた。

私たちはまだ比較的空いている車両に乗り、並んで座った。私の左隣に友達が座っていて、右隣はまだ空いている状態だ。

私たちの向かい側の座席では、仕事帰りと思しき男性がスマホをいじっていたり、これまた仕事帰りであろう女性がタブレット端末をいじったりしていた。

電車の出発を待ちつつ、友達と喋っていると、空いていた私の右隣に一人のおじさんがドカッと座った。

年齢は六十代くらい。黒の革ジャンを着ていた。歩き方や座り方からやや粗暴な印象を受けたものの、不潔感や酒に酔った様子はなく、一般的な大阪のおじさんという雰囲気の人であった。

そして、おじさんが座ったタイミングで電車はドアを閉め、出発した。

 

 

電車が動き出してから数十秒、異変が起きた。唐突におじさんが口を開いたのだ。

 

「今日日の女は電車でタブレットいじるんかい!電車でよぉ・・・・・・タブレットー!」

 おじさんは、私たちの向かい側に座ってタブレット端末を操作している女性に大声を上げ始めた。

 

 

もぉ~!やめてよ~!

 

 

そう思った。

隣の人が大声で他者に絡むタイプの人だった。最悪だ。

同時に、車両内の空気は緊張感を帯びた。謎のおじさんの台頭が、人々の気を引き締めたのだ。

そもそも、おじさんが何故、憤っているのか、誰も分からなかった。電車でタブレットを使用していることに怒っているのだろうか?だとすれば、スマホは良いのか?それとも、女性がタブレットを使用するのが気に入らないのだろうか?なんで?

謎は多く、いずれにせよ、おじさんの怒りに正当性は感じられなかった。

 

 

 そう考えているあいだも、おじさんは「女がタブレットかい・・・・・・今日日の女はよぉ」などと言っている。向かいの女性は顔をしかめつつも、おじさんを無視していた。

私はといえば、必死に平静を装いながら、友達とお喋りしていた。

この日、一緒にいた友達は女子だったのだ。こんなおじさんの台頭に狼狽えるような情けない姿は見せたくない、という男子高校生の小さなプライドがあった。

 

しかし、私たちも常に喋り続けているわけではない。

会話には波がある。一つの話題が終わり、次の話題に移行するまでの息継ぎの間であったり、笑いあったりした後の間であったり、である。

 

そして、そこをおじさんに突かれた。

 

私と友達の会話が一瞬途切れたその時、おじさんは私を見て言った。

「なあ、兄ちゃん、どう思うよ?今日日の女は電車でタブレットやで?」

 

最悪だ、難しすぎる!

 私は脳をフル回転させ、最善の回答を探した。

無視してしまおうかとも思ったが、無視するには、私とおじさんの間合いは近すぎた。

逃げきれない。戦うしかないのだ。

 

この時、私には二つの思いがあった。

一つは、先述した、女子に情けない所を見せられないという、男子の小さなプライド。

もう一つは、国語マスターとしての意地だ。

この当時、私は通っていた高校でトップクラスの国語の成績を誇っていた。そんな私が、こんな素性の知れぬおじさんに負けるわけにはいかなかった。これまで培ってきた国語力で、おじさんを言い負かす。

 

この二つの熱い思いを胸に、私は言った。

 

 

「まあまあ・・・・・・まあ、ね?」

 

 

「ま」、「あ」、「ね」

五十音中、国語マスターが発したのはわずか三音であった。

 教育の敗北。

現場において偏差値など無意味。

そう痛感した。

 

すると、おじさんは「いや、まあまあ、じゃなくてさあ~」と言って、ため息をついた。やれやれ、と言わんばかりの風情を滲ませている。

 なぜ、こんな目に・・・・・・。

 私は知らないおじさんに失望されているのだ。そして、なぜかそれがショックだった。

私とおじさんとの間に流れる沈黙。周囲の人々には、もはや、おじさんと私の二人連れのようにも見えたはずだ。

 

おじさんは私に失望し、私に対する興味を失ったのか、スマホをいじり始めた。

 

スマホは良いんや。

おじさんは電子端末全般ではなく、あくまでタブレット端末に怒っている。私はまた一つ、彼のことを知れた気がした。

 

そこで突然、左から声をかけられ、ハッとする。

そう、私は友達と出かけていたのだ。友達と私の二人連れ、これが本来の姿だ。

先ほど、おじさんに打ち負かされ、深手を負っていたが、そのことを悟られぬよう、友達とお喋りを再開した。

 

しかし、この後、私はまた急襲されることとなる。

友達との会話が途切れた瞬間、「なあ、兄ちゃん」とおじさんの声がしたのだ。

 

こいつ、マジでなんかの手練れか?

そう思った。

こちらの会話の波を見切るのが上手すぎる。そして、無視はできない間合い取り。

私は仕方なく、おじさんを見た。

 

 

「なあ、兄ちゃん。さっきはごめんな」

 

予想外の言葉であった。私は狼狽えた。

「いえ、はい」

またしても、三音。自分の限界が見えた。

それでも、私の心は軽かった。

先ほど、私はおじさんを失望させてしまったにもかかわらず、おじさんは再び歩み寄ってくれたのだ。優しい一面もあるじゃん。おじさんを好きになりかけている自分がいた。

 だが、私はそこで気づく。

大声や冷たい態度による精神的圧迫と、ふとした瞬間のやさしさを 使い分ける。これはDVと同じシステムだ。

 

おじさんは続けて言う。

「兄ちゃん、B駅って銀行ある?」

私たちが乗っているこの電車はいま、友達の最寄り駅であるA駅に向かっていた。そして、A駅からさらに5駅ほど通過したところにB駅はあった。ちなみに、私の最寄り駅はB駅からさらに進んだC駅だった。

→【電車現在地】→【A駅】→【5駅ほど】→【B駅】→【C駅】→

という感じである。

「いや、ちょっと分からないです」

私は正直に答えた。

おじさんは、そうか、とだけ言った。B駅周辺の銀行情報を持たない私におじさんは再び失望したのか、前へ向き直った。

 

私は焦っていた。

その時、電車が止まり、「Aです。お降りの際、お忘れ物のないようご注意ください」と車掌が告げた。

焦る私。すると友達が「一緒に降りよう」と小さく言って、私を引っ張った。

 

めちゃめちゃ気が利く人だ。

 

おじさんの目的地は、発言の内容から、B駅である可能性が高いと推測できた。A駅で友達が下りてしまえば、C駅を目指す私はここから本当におじさんと二人連れになってしまう。国語マスターの語彙力を以って、この時の心情を描写するならば「そんなんいやや~!」である。

そんな状態の私に、友達はさりげなくも、最高のサポートをしてくれた。

友達に続いて電車を降りているとき、本当に感謝の気持ちしかなかった。

ホームに立った私は、いまいちど乗っていた電車を振り返った。最後に安全な場所からおじさんを見ておこうと思ったのだ。

 

すると、おじさんはホームに居た。

 

いや、ここで降りるんかい。やとしたらB駅の銀行の話は!?

 

困惑と怒りを覚える私をよそに、おじさんはそのまま雑踏の中へと消えていった。

 

 武術の達人のような技術を持ちながら、予測不能の獣じみた奔放な動き。

高三の私は完敗したが、今の私ならばいい勝負ができるのだろうか?

私は今でも電車であのおじさんと再会できる日を待っている。

 

緊迫!密室ゲーム

 

突然ですが、みなさんは就活してますか?

就活は人事や他の就活生と密室で行われる駆け引きしたり、いままで見えなかった自分の一面を、自己分析によって見つけたりしますよね。

私はいま就活生ですが、思い返せば私は、何年も前、すでにそれに似た経験をしていました。

 

あれは私がまだ中学三年生だった頃。

ある休日、私を含むクラスの男子4人と女子4人の計8人で集まって、みんなでホラー映画を観ようという事になった。大量のお菓子とジュースを買い込み、それらをつまみながら、我々男子チームが適当に見繕ってレンタルしてきたホラーDVDを再生した。

再生してからも、本編が始まるまでに関連DVDの宣伝映像や流れたりしていたので、まだみんなお菓子を食べたりお喋りしたりしていた。私もなんとなく視界の端に画面を見つつ、お菓子を食べていたのだが、やがて画面が暗くなり始まりそうな雰囲気になったので、ちゃんとテレビ画面の方へ向き直る。

すると、画面には本編開始前のお断りが表示されていた。私が画面を見てから1秒ほどで画面が切り替わったので、私がお断りの文言を目にした時間は本当にわずかなものだが、確実にこう書かれていた。

 

お断り

このDVDの本編映像には過激な性的描写が含まれます。ご了承ください。

 

 

 

 

 

――――絶対にDVDを止める。

真っ黒の背景に白い字で書かれたその「お断り」を捉えた瞬間から、私の顔つきは任務を帯びた男のそれに変わったのである。調子よくお喋りし、スナック菓子をバリバリとほおばっていた馬鹿そうな男子中学生はもうそこには居なかった。

 

いつからだろうか。ドラマや映画のラブシーンで気まずくならなくなったのは。

友達と一緒に映画やドラマを見ているときにラブシーンがあっても、大人となった今、そんなもので気まずい雰囲気にはならない。

しかし、この時の私たちは全員中3。しかも描写は過激な」ときている。

画面の向こうで展開される情事。さして飲みたくもないコーラを飲むふりをして、なんとなく気まずさを紛らわせようともがく。そんな自分や友達の姿が、私にはハッキリ見えた。

 

そんな未来を回避するためにも、私は人知れず動き出す。まず、DVDが入っていたケースに手を伸ばした。そしてケースのラベルから本編は90分という情報を得た。

90分のホラー作品で自分が監督ならば、ラブシーンを終盤近くにもってくるだろうか?

 

否である。

ホラーのセオリーに従えば、ラブシーンは遅くとも中盤までには済ませておきたい。

つまり、全90分のうち、前半45分の間に敵は来る。

多く見積もっても、45分以内にDVDを止めねばならない。

 

こうして私が状況確認しているあいだにも、本編開始からすでに5分経過していた。

残り時間は40分。私は早速、次の一手を指した。

 

 

 

「あ、あ~、なんかつまらんくない?」

 

 

 

 

――――シンプル・イズ・ザ・ベスト

これである。最もシンプルでありながら、力強い一言。これでDVDを止めてみせる。

 

しかし、すぐさまA(私以外のメンバーを便宜上、A・B・C・D・E・F・Gとする)が「いや、まだ始まってから5分くらいしか経ってないやん」という、ごもっともというほかにない指摘で私を制した。

おいおいおい!という感じである。5分くらいしか経ってないからこそ、今のうちにだろ!とは言えなかった。

私の葛藤を知らない人からすれば、DVDの冒頭5分で作品を「つまらない」と切り捨てる、せっかちクソ野郎へと私は成り下がっていた。

だが、只々せかっちクソ野郎へ成り下がったわけではない。これで私は確信した。Aは「お断り」を見ていない側の人間であると。

もしも、「お断り」を見ていて私と同じ志を持っているならば、DVDを止めようと立ち回る私の援護をしてくれるはずである。先ほどの私に対して援護が皆無であったことを考えると、「お断り」を見たのは私だけなのかもしれなかった・・・・・・。

私は強い孤独感に襲われた。

 

意気消沈した私はその後しばらく、黙って画面を見続けた。

と言っても内容は一切、頭に入って来てはいなかった。情事が始まりそうか否か。その時の私にはそれ以外の情報はどうでも良く、逆に言えば、それだけを判定するサイボーグのような存在になっていた。あと、緊張状態にある私の飲み物の消費量、消費速度は共に群を抜いていた。

 

仮初めの平和は突如崩れ去る気配を見せた。本編開始から30分、サイボーグのレーダーに反応があったのである。

画面上で、登場人物たちが、どんどん暗がりに突き進んでいく。

まずい。これは本当に始まる。

ここで私は最後の一手を指した。

 

 

 

「なんかあれやな、つまらんな~。」

 

 

 

――――シンプル・イズ・ザ・ベスト

これである。これしかないのである。藁にもすがる思いで放ったこの一言に続いたのは予想外の言葉たちであった。

「たしかにな~、他の見ん?」とBが

「そうしよ!ほかのやつ見よ!これダメや」とCが援護してきたのである。

私とBとCの強い主張により、私はついにDVDを止めることに成功した。

そこからは安心感からか、あまり覚えていない。ただ、後で確認したところBとCも「お断り」を見て、DVDを止める機を狙っていたのであった。私は最初から一人ではなかった・・・・・・

 

 

この一件から私は自身の新たなる一面に気づくこともできた。

「お断り」をあらかじめ見た私は、ラブシーンの予感を察知し次第、トイレのふりなどで席を外し、自分だけ気まずさから逃げることは、やろうと思えばできたのである。

しかし、私はその選択をしなかった。私は意外と他人のために頑張れるという事に気づけたのだ。

 

みなさんも隠された自分の一面というのを探してみてはどうでしょうか。

 

犯罪にご用心2

突然ですが、皆さんは刑事ドラマやサスペンスを見たりしますか?

先日、あるサスペンスドラマを見ていると、法廷で「故意の犯行なのか、それとも過失なのか」が争われていました。僕は法律に詳しくありませんが、どうやら故意か過失かで判決内容も大きく違うようで、法曹の方は日々難しい判断をしているのだなと感じました。それで思い出したのですが、僕にもそんな難しい判断を迫られた経験があります。そこで今日は、嘗て僕が巻き込まれた事件と、それに対して僕が下した判決について話したいと思います。

 

あれは僕がまだ中学2年生だったときのこと。

僕は中学では剣道部に所属しており、ある日、剣道の昇級審査を受けに行くことになりました。昇級審査とはその名の通り、級位や段位を取得するための試験で、年に何度か決められた会場で開催されます。審査の流れとしては、まず最初に竹刀による基本技と互角稽古の様子を審査されます。そして、それに合格した者は木刀による基本技稽古、いわゆる「形」の審査を受けられるのです。

普段は木刀を使用することはほとんどありませんが、こういった審査の場では木刀を使用する機会もでてきます。なので、僕もこの日の審査のために新品の木刀を用意しました。

とりあえず、竹刀での審査を通過した僕は、次の審査で使う木刀に持ち変えるために自分の荷物を置いておいた場所に一旦戻りました。

 

消えていました。僕の木刀、消えていました。

 

めちゃくちゃ焦りました。こんなにも木刀が必要なシチュエーションでピンポイントに木刀だけが盗まれる事がありますか?そこからは考えるより先に体が動き、その辺にいた全く知らない人に事情を説明して木刀をお借りし、事なきを得ました。

審査中はずっと、「なぜ俺は他人の木刀で・・・・・・。」と考えていました。「他人の木刀で剣道」なにやら新しいことわざが生まれそうです。

 

審査終了後、僕は木刀を盗まれた怒りに燃えていました。そんな時、心優しい後輩が言ってきたのです。「でも、相手も盗む気はなかったかもしれないですよ?ただ間違えて持って行っちゃっただけかも。」と。

ハッとさせられました。怒りに燃えるあまり、僕は最初から「故意に盗まれた」と決めつけてしまっていました。反省です。

その後輩の言うように、誰かが自分の木刀と間違えて、僕の木刀を持って行ってしまった、「過失」の可能性もあります。もしそうだとしたら、審査を終えたこの会場に最後に一本の木刀が残されるはず。そして、その残された木刀こそが僕の木刀を間違えて持って帰った人のもののはずです。

僕たちは会場から人がいなくなるのを待ちました。

 

しばらくして、その時がやってきました。僕たちしかいない会場。その隅に置かれた一本の木刀・・・・・・。

僕は思わず駆け寄ります。「あわよくば自分の木刀であってくれ!」なんて淡い期待を抱きながら、木刀に最接近。そして気づきました。

なんか短い。残されていた木刀はなんか短かったのです。僕たちが使う「大刀」でなく、いわゆる「小刀」というやつでした。ですが、そんなこと言われてもイメージしづらいですよね。イメージ画像を貼りますので、皆さんも「大刀」と「小刀」の差を見比べてください。

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故意だろ。

この長さの間違い、過失では無理があるだろ。昇級審査会場に来たものの、自分の木刀が小刀であることに気づき俺の木刀を盗んだんだろ!さらには用済みになった小刀を会場に放棄して帰ったんだろ!なんの置き土産だよ!

 

すみません。激しく取り乱してしまいました。皆さんはどう思われますか?この事件、故意の犯行でしょうか?過失でしょうか?

人それぞれ、いろいろな判決があってもいいと思います。ただ僕は、あの日僕の木刀を盗んだ犯人を絶対に許しません。

 

そんな憎き犯人が残した小刀を持って帰っても仕方がないので、結局、その小刀は会場に残して帰りました。もしかすると、あの小刀はまだあの会場にあるかもしれません。皆さんはくれぐれも自分の木刀を大切にしてください。

眠れる洋菓子職人

突然ですが、皆さんは家庭でお菓子作りをしたことがありますか?

今日はバレンタイン。毎年お菓子を作っているという方もいるのではないでしょうか。かく言う僕も嘗て一度だけ、バレンタインに手作りのお菓子を作ったことがあります。そこで今日は、慣れないお菓子作りに奮闘した僕と、そんな僕が危機に陥った時に見えた力について話したいと思います。

 

あれは僕がまだ中学3年生だったときのこと。バレンタインが近づいてきたある日、一人の友人が相談してきました。「ドッキリを仕掛けたい。どうすればいい?」と。

というのも、僕は小6の頃から毎年バレンタインにはターゲットを決め、ドッキリを仕掛けることを習慣としていました。「何を言っているのか分からない。」「なんだその習慣は。」と思う方もいるかもしれませんが、とにかく僕にはドッキリに関して一日の長がありました。

ですから、友人は僕にドッキリの相談を持ち掛けてきたのです。友人のプランを聞いてみると、「ターゲットの下駄箱の中にチョコを置いておく。ターゲットがそれを食べるとチョコの中には大量のわさび入り。」という古典のようなプランでした。ですが、なんだかんだで僕は友人に協力することとなりました。

 

 

そうして、僕は人生で初めてのお菓子作りに挑むこととなったのです。バレンタイン前日、僕たちはチョコレート、チューブわさび、デコレーション用のペン、かわいらしいラッピングなど必要な材料を買い集め、友人の家に集まりました。

僕たちは手始めにチョコレートを細かく砕き、「湯せん」を見よう見まねでやってみました。水を張った鍋を火にかけ、その中にボウルを浮かべ、チョコを溶かす。見よう見まねにしては順調にいきました。いい感じにチョコが溶けてきたところで、チューブわさびを丸々一本投入。きっとこの時の僕たちはかなり悪い顔をしながら、ボウルを混ぜていたんじゃないかと思います。

 

しかし、順調に見えたチョコ作りはここから崩壊していくことになります。チョコとわさびがしっかり混ざった後で、チョコに異変が。パサパサというかモソモソというか、どんどん固くなってきたのです。そう、僕たちは鍋に火をかけたまま作業していたのでチョコは混ぜられている間にもどんどん加熱され、油分が分離し始めていました。湯せんをする時のベタなミスです。

ですが、「加熱し過ぎて油分が分離したから固くなっている。」なんて事は成長した今の僕だから言える事。当時の僕たちにとってはただの怪現象です。目の前でみるみるツヤを失っていくチョコレート。狼狽した僕は「ねぇ、わさび!?わさびが原因!?」と、その場の誰もが答えを持っていない問いを繰り返したのを憶えています。

そんな僕をよそに、友人が冷蔵庫を開けました。「水分が抜けて固くなってるんやとしたら、何か水分を足せばいけるかも!」と。「潤いがないなら自分で足せばいい」今思えば、謎のDIY精神ですね。

けれど、その時はそうするしか道はありませんでした。僕はとっさに冷蔵庫にあったオレンジ(1/2個)を取り出し、自分の握力のままに力いっぱい絞りました。

結果から言うと、手搾りかつ搾りたてのオレンジ果汁を惜しげもなく使用した甲斐なく、僕たちはチョコの蘇生に失敗しました。モソモソになったチョコにはペンでデコレーションを施し(特に書くことも思いつかず、チョコ全体にただ楕円を書きました。)、どうにかこうにか形にしました。

こうして、僕の初めてのお菓子作りは幕を閉じました。「ベタな失敗から始まり、それを挽回しようとして更なるミスを重ねて、散々じゃないか!」と思われても仕方ありません。しかし、僕はこの一連の自分の行動から「自分の中に眠っている力」の片鱗を感じます。何故なら、あの切羽詰まった状況で無意識的にオレンジを選択しているからです。あの時、冷蔵庫には水分として使えそうなものがオレンジ以外にもありました。ヤクルトなどです。ですが僕はほぼノータイムでオレンジを選択した。そして、この世には実際、オレンジピールチョコというものが存在します。これは単なる偶然でしょうか?もしかすると、僕のうちに眠っている洋菓子職人が目覚めようとしているのではないでしょうか。

僕はあれ以来、お菓子作りには挑戦していません。次にあの洋菓子職人が目覚めたとき、僕は僕でいられるのでしょうか・・・・・・。

新春!正体を暴け

突然ですが、皆さんは初夢を見ましたか?

初夢に「一富士二鷹三茄子」を見ると縁起が良い、なんて言いますよね。僕はというと、新年に入ってからもう二度も「命を狙われる夢」を見ました。夢の中の出来事といえど、あまり縁起が良いとは思えません。そこで今日は、夢で命を狙われた僕の焦りと起床後の悲しみについて話したいと思います。

 

まず、一度目の「命を狙われる夢」です。

この夢は僕が自転車を盗むところから始まります。僕が盗んだ自転車の持ち主は俳優の岩松了です。

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俳優・岩松了

 

皆さんも一度はテレビで見たことがあるのではないでしょうか。僕はこの岩松了から自転車を盗んだわけです。

しかし、誤算がありました。この岩松了、実は裏社会の人間だったのです。自転車を盗まれたことに激昂した岩松了は部下を動員。僕を執拗に追跡し、最終的に僕は追い詰められ、岩松了に銃撃されます。僕はそこで目が覚めました。

 

 

次に、二度目の「命を狙われる夢」です。

こちらの夢ではどういう経緯か覚えていませんが、女優の笛木優子に命を狙われます。

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女優・笛木優子

 

この人もまた、皆さん一度はテレビで見たことがあるのではないでしょうか。この夢は詳しいことを一切覚えていないのですが、とにかく「笛木優子が僕の命を狙っている」という情報を得た僕が逃げるという夢でした。詳細を覚えていないので断言はできませんが、恐らく僕は笛木優子の自転車は盗んでいません。ですから、今回は自転車以外の原因があったと考えられます。

 

さて、勘の鋭い方はもうお気づきかもしれませんが、この二つの夢には二つの共通点があります。

一つ目の共通点、それは非常に怖いという事。命を狙われ、逃げ回っているのですから、焦燥感や恐怖感に襲われるのは当然です。特に岩松了のケースでは、自転車を盗んでしまったばっかりに、最後は銃で撃たれます。『15の夜』でバイクを盗んだ尾崎も、こんなラストは予想していなかったと思います。

二つ目の共通点は、「顔は知っているが名前までは知らない芸能人」が命を狙ってきた事です。

岩松了笛木優子も見たことはあるけど、名前までは知らなかった。」という方が大半ではないでしょうか。僕も皆さんと同じです。二人の名前は知りませんでした。

 

ですが、恐怖で目を覚ました後、僕は思いました。「夢と言えど、自分の命を狙ってきた相手の名前くらい知っておきたい」と。

手がかりは夢の中で見た顔のみです。まず、その顔が出演していた気がするドラマ、映画、CMを洗い出し、キャストを調べる。キャスト一覧の中から、それっぽい名前をいくつかピックアップし、その名前を一つずつ調べていく。この方法で僕は岩松了笛木優子に辿り着きました。

分かっています。「起床後、朝一番になんて無意味なことをやっているんだ。」と思われる方もいるでしょう。僕自身、作業中に思いました。「なんか悲しいな。」と。

その悲しみを乗り越えて僕はこのブログを書いています。

皆さんも今後、夢に登場した有名人の名前を知りたい時には僕と同じ方法を試してみてはいかがでしょうか。きっと悲しい気持ちになります。

犯罪にご用心

突然ですが、皆さんは今年どんな一年を過ごされましたか?

今年も残すところあとわずか。一年を振り返ると、上手くいったこともあれば、なかなか思い通りにならなかったこともあると思います。そこで今日は、僕の「今年一番上手くいった事」、逆に「今年一番ダメだった事」の両方について話したいと思います。

 

夏休み真っただ中のある日、僕は仲の良い友人たちとご飯を食べに行きました。僕を含めて四人で行ったのですが、僕以外の三人はこの夏からの留学を控えていました。そのため、必然的に話題は留学のことへ。アメリカやイギリスの地名が飛び交うなか、留学予定の無い僕も負けじと地元の地名を言ってみたりしましたが、全員に無視されました。この程度のジョークに笑って相槌を打てなくて、留学先でやっていけるのかな?と、友人たちのことが心配になりました。

それから他に留学での心配事といえば、治安です。治安のよい日本での暮らしに慣れている我々が海外で暮らすとなると、「自分の身は自分で守る」という意識をしっかり持たなければなりません。ですから、友人たちには「向こうでスリだとか置引きだとか犯罪に巻き込まれないように用心しろよ。」と伝えました。先ほどジョークを無視されたばかりなのに、我ながらすごく優しいなと思いました。そしてその後、友人たちはそれぞれ海外へ旅立っていきました。

 

その友人たちが旅立ってから、しばらく経過したある日。

日本で留守番中の僕はファストフード店にいました。僕は座席にスマホと学生証の入ったバッグを置いてカウンターに注文しに行きました。カウンターで商品を受け取り自分の座席に戻る。この間、約三分です。

 

消えていました。僕のバッグ、消えていました。

 

めちゃくちゃ焦りました。これが置き引きか!と。そこからは考えるより先に体が動き、僕は店の外へ飛び出しました。駐輪場の方へ目をやると、原付に座りヘルメットをかぶっている男。そしてその男の膝の上に僕のバッグ!男は僕のバッグからスマホ取り出し、ロックを解除しようとしていました。僕は急いで駆け寄ってバッグとスマホを取り返しました。置引きされたのは初めてのことだったので驚きましたし、取り返せたことにも驚きました。

あと、男も驚いていました。「お前は!お前だけは驚くなよ!」と強く思いました。とりあえずバッグを取り返せたので警察沙汰にはせず、かといって男に文句を言うほどの元気もなかったので僕はまた店に戻り、事件は幕を閉じました。

 

さて、これが僕の「今年一番上手くいった事」と「今年一番ダメだった事」です。「一番ダメだった事」はもちろん置引きに遭った事です。荷物を置きっぱなしにするのはあまりにも迂闊でした。

「一番上手くいった事」はお分かりですか?それは「フリ」です。海外へ行く友人たちに対して「海外でスリだとか置引きだとか犯罪に巻き込まれないように用心しろよ。」と偉そうに言った僕が「日本に居ながらにして置引きという犯罪被害に遭う」。

過去の発言が、まるで未来の自分が置引きに遭うのを見越していたかのような、絶妙な前フリとして成立したのです。

「一番ダメだった事」無しには「一番上手くいった事」も成立しなかった・・・・・・。皮肉なものですね。

 

皆さんはくれぐれも犯罪にご注意ください。そして、残り僅かな2015年を平和にお過ごしください。

呪縛!全員そう見える

突然ですが、皆さんは「人違い」をしたことがありますか?

街で知り合いを見かけ、いざ近づいてみたら全然知らない人だった。なんて体験、誰もが一度はしたことがあるのではないでしょうか?今日は僕がそんな人違いを通して学んだ事、そして、突然の別れについて話したいと思います。

なお、今回のお話はこのブログで何度か話している心霊体験の続きです。読んでいないという方は下の記事を参照してください。

 

vsmegane.hatenablog.com

vsmegane.hatenablog.com

 

 

先日、一限目の授業に向かうため、大学構内を一人で歩いていた僕はあることに気づきました。前方、20メートル先からこちらへ向かってきているのです。食堂にて、僕や友人を恐怖させたあの男が。初めての食堂以外での遭遇に加え、僕はいま一人。慌てている間にもどんどん距離は接近!そして、近づいてみて僕はまた気づきました。別人であると。人違いだったのです。

その後、無事に教室へ到着し、先に着いていた友人の隣に座りました。ですが、友人の様子がおかしいのです。不思議に思っていると、友人が小声で耳打ちしてきました。

「教室の端に座ってるあの人、食堂のあの男じゃない?」と。僕が教室に来るまで、友人はドキドキしながら、その男と思しき人物を観察していたのです。僕はレジュメを取りに行くフリをしながら近づき、気づきました。別人であると。人違いだったのです。

朝から僕は路上で。ほぼ同時刻、友人は教室で。それぞれ異なる場所で、同じ「あの男の幻影」に踊らされてしまっていたわけです。

「そんなに人違いする訳ないだろ!」と言われるかもしれません。ですが、僕と友人は食堂での心霊体験を経て、精神的な疲労がピークを迎えていました。食堂でご飯を食べる時にも、すれ違うあらゆる人が「あの男」のように思えてしまうのです。病院に行くべきでしょうか。ですが、医師になんと説明すればよいかも分かりません。「ほんとだもん!本当に幽霊いたんだもん!ウソじゃないもん!」と言っても誰も信じてくれないでしょう。信じてくれる人がいるとすれば、サツキとメイのお父さんくらいのものです。

ですから、僕たちは自分で調べてみました。「誰を見ても、それを特定の人物と見なしてしまう現象」これを「フレゴリの錯覚」というそうです。錯覚とありますが、実はこれは妄想の一種なんだそうです。それを知った時、僕たちは心がスウーッと軽くなるのを感じました。僕たちが踊らされていた「あの男の幻影」は全て僕たちが作り出していた妄想。それに気づいてからは、「フレゴリの錯覚」をしてしまうことはなくなりました。そして不思議なことに、それと同じ頃から本物の「あの男」とも食堂で遭遇することがなくなりました。「あの男の幻影」のみならず「あの男」そのものも僕たちが作り出した妄想だったのかな。それとも成仏したのかな(笑)なんて言いつつ、「あの男」がいない食堂が少し寂しく感じられました。

 

あの男が食堂から消えてしまってから、しばらく経ったある日。僕は教室で一限目が始まるのを待っていました。すると、友人から連絡が。「いま、あの男と同じ電車に乗っている。俺がこのまま消息を絶った場合は、このことを警察に伝えてくれ。」と。

完全に油断していました。「あの男」はまだ成仏などしていなかったのです。僕は正直、この時点であきらめていました。「友人はこのまま一限目には出席できず、謎の失踪を遂げる。そして、友人の次は、僕の番だ。」と。

 

友人は一限目にしっかりやってきました。全くの無傷でした。「約一メートルの距離やったから、間違いなくあの男。最後は全身が光の粒みたいになってフッと消えた。」と友人は言っていました。すみません、後半部分は言ってなかったかもしれません。いや、絶対に言ってませんでした。ですが、多分そうなったんじゃないかと僕は思います。光の粒みたいに。

最終的に、友人も僕も特に厄災に見舞われることもなく、無事でした。では何故、あの男は久しぶりに人前に姿を現したのでしょう?しかも、食堂ではない場所で。

僕は「お別れのあいさつ」をしにきたのだと思います。成仏する覚悟ができたあの男は「初めて出会ったあの日、食堂で僕の存在に気づいてくれてありがとう。」と伝えたかったんじゃ?なんて考えてしまいます。

 

根拠はありませんが、僕たちが食堂であの男を見かけることは、もう無いのだと思います。ですが、僕たちがあの男の事をずっと憶えていてあげることはできます。それが、あの男のためになる。そんな気がします。

ですから明日、食堂に行ったら僕は食堂のおばちゃんに言いたいと思います。

「食堂のテーブルに献花してもいいですか?」と。